こんにちは。せのしゅん(@senosyun_archi)です。
不動産ディベロッパーとして約10年働いています。
こんな私が、「不動産ディベロッパーの中の人目線」で、
仕事内容や不動産ディベロッパーという職種に対する評価をしています。
では、早速いきましょう。
不動産ディベロッパーの仕事内容
不動産ディベロッパーの仕事は主に下記です。
- 不動産を買う、売る
- 活用の方法を企画する
- 収支を検討する
- 行政と調整して商品価値を上げる
- 地権者と調整して理解を得る
- 設計会社やゼネコンをとりまとめて計画を実現する
- テナントを集めて貸す、または売却する
- 運営管理する(外部委託する場合が多い)
ザっとこんな感じ。
ひとことで言うなら、不動産開発のプロジェクトリーダーです。
将来に長く残るモノを作れること、
プロジェクトリーダーとして方向性の決定に携われること、
まちづくりとして大きなグランドデザインを描けることが魅力です。
一方で、不動産は金額規模が大きいので関係者が多く、
地道な関係者調整がメインの仕事になります。
具体例を出します。
ビル全体の収益をさらに上げるために設計を変えようとしたとします。
そうすると、具体的には下記の調整が必要です。
- 設計会社に図面を書きなおしてもらう
- 施工会社に見積りと工程を示してもらい、お金と工程が予定通りになるかの確認
- 設計を変えることで、どれくらい収入と支出が増えて、どれくらい効果があるのかを整理して社内で意思決定
- 地権者にメリットがあることを説明するとともに、それに伴って追加で費用負担が必要になる場合は、お金を出してもらう
- 行政に許認可申請をしている場合が多いので、確認して手続きする
ザっとこんな感じ。これでもまだラクな方です。
大きなプロジェクトだとスキームが複雑化しており、
煩雑な手続きが発生する場合も多いです。
当然、相手がいることなので、うまくいかないことも多く、
資料の作り直しも多々発生します。
見た目は派手な仕事に見えますが、
やっていることは地道な作業がメインです。
不動産ディベロッパーの主な会社と中の人から見た印象
主な会社と、私から見た印象です。
純粋な不動産ディベロッパー
- 三井不動産:最大手。給料は破格。ただしかなり狭き門で、東大京大、早慶上位、海外大学がメイン。仕事は忙しく案件もまだまだありそう。雰囲気はやや体育会系。
- 三菱地所:三井不動産と並ぶトップ2。こちらも給料破格で狭き門。丸の内の優良物件からの賃料だけでやっていける。最近は他の地区にも進出しようとしているが、切迫感はあまりない。日本最高レベルのホワイト高給企業。ただし部署によっては忙しい。
- 住友不動産:ゴリゴリの体育会系。個人的には苦手なタイプ。年収はトップ2ほどではないが、30代で1000万は余裕で超えるレベル。門は狭いが比較的辞める人が多い印象。早慶のラグビー部みたいなイメージ。
- 野村不動産:住友不動産ほどではないが、体育会系の印象。マンションディベロッパー。ひたすらマンションをつくるだけなので、企画の面白味は少なそう。30代で1000万は余裕で超える。
- 東急不動産:三菱地所の次におっとり系。商業ビル、オフィスビルやマンションなどバランスよくやっている。企画も面白そうな印象。年収は野村不動産と同じくらいか。渋谷の再開発などで存在感を示している。
- ヒューリック:最近存在感を示してきた会社。三井、三菱と同じくらい狭き門。年収は上記2社よりも良いという噂で、30代で1500万近くもらえる場合もあるとか。わりと謎に包まれているので雰囲気は不明。
- 東京建物:八重洲を中心に開発を仕掛けている会社。上記の会社よりは若干ランクは下がる印象。とは言え、30代で1000万はもらえるはず。話題になる物件はあまりないが、確実な物件をやっているイメージ。雰囲気はわりとおっとり。
- 森ビル:六本木ヒルズなど、六本木を中心にしている会社。正直、これから新しい物件はあまりなさそう。六本木の土地を買うのは困難な見込み。とにかく既存ビルの収益向上のためにエリアマネジメント(運用)に力を入れているイメージ。ランクは東京建物と同等。
不動産ディベロッパーもやっている会社
- JR各社(主に東日本):駅ビルや社有地の開発がメイン。とは言え、JR東日本以外、あまり需要はない。東日本は品川、新宿、渋谷など目白押し。年収は不動産ディベロッパーに比べると下がるが、それでも30代で900万程度(東日本)で、平均よりは圧倒的に良い。
- 東急:私鉄大手。最近は鉄道を子会社化したので、不動産などのまちづくりに注力している。渋谷の再開発が成功するかが目下のポイント。再開発系はいそがしそう。鉄道関係の会社にしては自由な社風。年収はJR東日本と同じくらいか。
- 阪急:関西私鉄大手。大阪駅前のグランフロントが完成して、今後あまり大型開発はなさそうな見込み。鉄道会社だが、意外と体育会系らしい。縦割りな会社。年収は東急よりは下がるイメージ。
ちなみに、ゼネコンは不動産ディベロッパーではありません。
不動産ディベロッパーは発注者ですが、ゼネコンは受注者です。
プロジェクトリーダーとして全体の指揮をとるのは不動産ディベロッパーで、
工事に関して現場で指揮をとるのがゼネコンです。
不動産ディベロッパーに向いている人
不動産ディベロッパーに向いているのは、
私の経験上、下記の項目を満たしている人です。
- リーダーシップを発揮できる人
⇒プロジェクトリーダーになるので関係者をまとめられるリーダーシップは必要
- スムーズにコミュニケーションをとれる人
⇒関係者が多いので、誰とでも話せるのは重要
- 交渉が得意な人
⇒関係者との交渉が続きます。年上の人とも交渉できることが必要。
- 上司が黒だと言ったら、黒と言える人
⇒不動産の開発には多額の資金が必要なので、担当で意思決定できることはとても少ない。自分の考え、やり方とは逆の進め方でも許容できる必要あり。ある意味体育会系。
私が不動産ディベロッパーになった理由
私が不動産ディベロッパーになったのは、
- 建築に関連する業界であること
- 発注側として指示を出す側の仕事であること
という条件を満たしていたからです。
詳細は下記記事で書いていますが、
- 大学院で建築を学んでいたので活かしたかったこと
- 人に指示されるよりも指示する側の方が向いていると思ったこと
が理由です。
ただし、いざ入社してみると、実際はすこし違いました。
小さな物件では、ある程度自分の裁量で判断できたのですが、
物件の規模、投資額が大きいほど社内の上層部から指示されることが多くなり、
じぶんで判断できることが少ないです。
設計会社やゼネコンには指示ができるものの、
結局は上司が言うことに沿って伝えているだけ。
指示されて動かざるを得ないのが実態です。
上司が黒と言ったら黒、というのが、この業界です。
発注側として指示をしたいから、
という理由で不動産ディベロッパーを選ぶのは、
止めておいた方がいいでしょう。
ずばり不動産ディベロッパーという職種はオススメしない
では、ずばり中の人から見て不動産ディベロッパーがオススメできるかというと、オススメはできません。
理由は、身につくスキルに汎用性がなく、業界の将来性がないからです。
不動産ディベロッパーとして身につくのは、
関係者との調整スキルと多少の不動産・建築の知識です。
このスキルセットは、固有スキルすぎて転職では大して活用できません。
エージェントから提案されたのは同業他社か、
どの業界からでも目指せるコンサル会社くらいです。
金融やITであれば幅広く転職の可能性がありますが、
「不動産や建築で飯を食っていくんだ!」
という強い意気込みがない限りは避けた方が良いです。
また業界としても、伸びる可能性は低いです。
少子高齢化、リモートワークの普及からして、
明らかに不動産ディベロッパーとしては逆風。
IT業界など今後必要とされるスキルを身につける方が、
よっぽど将来の年収期待値は高いでしょう。
結論として、不動産ディベロッパーは汎用性が低く、
身につくスキルセットも、業界の文化も過去の遺物。
イメージとしてはテレビ業界と同じような位置づけ。
斜陽産業です。
中で10年見てきた私が言うから、これは間違いないです。
もしどうしても不動産に関わりたいなら、
不動産×ITとか、不動産×金融とかの文脈で会社を選ぶのがオススメです。
確実にこっちの方が将来性があります。
※なお、私はお金だけ貯めて早々にセミリタイアするつもりです。
まとめ:不動産ディベロッパーになるのはやめておけ
不動産ディベロッパーに興味がある人にとっては、
キビシイ内容だったかもしれません。
でも、事実をしっかりと認識した上で、
今後のキャリアを考えてほしいという思いで書きました。
参考になれば幸いです。
もし気になることがあれば、
コメント欄から質問も受け付けています。
では。
おしまい。